「ご、ごめん……その……告白でもするのかな、って思って……気になって」
俯いて語るピーターに、リーマスはくすりと笑った。
「確かに、告白には違いないかな」
「え!?り、り、リーマス、まさか、が!?」
「あ、いや、そうじゃなくて。……まあいいや。ちょうどいい。ピーター、ジェームズとシリウスをここに呼んで来てくれ」
11. SHARE the secret, SHARE the pain
分かち合える仲間たち
「あ、それじゃあ私……」
ピーターがジェームズとシリウスのもとに走り去っていくのを見届けて、は部屋を出ようとリーマスに背を向けるが、リーマスは「ちょっと待って」と呼び止めた。
「君も、立ち会ってくれないかな」
「え?でも」
「ここまで関わったんだから、最後まで、さ」
それは昨日後を尾けていたことに対する皮肉?は苦笑しながら、こんなに重大な場に同席してもいいものかと思ったが、内心嬉しくもあった。男の子の
「うん……それじゃあ」
が答える、リーマスはにこっと笑った。
やがて、ジェームズとシリウスを連れたピーターが戻って来る。2人はに気がつくと眉をひそめたが、リーマスが先に口を開いた。
「みんなに、話があってさ。その辺に座ってよ」
ジェームズ、シリウス、ピーターの3人は、リーマスが腰掛けている席の向かいに並んで座った。はそこから少し離れた窓際で、立ったまま彼らの様子を見守っていた。
3人の背が見える。リーマスの強張った笑みが窺える。
「なんだい?あらたまって」
リーマスの張り詰めた様子に、ジェームズは明るい声で言った。リーマスは目を伏せる。睫毛が僅かに震えているような気がした。
「気づいてると思うんだよね。でも、……」
リーマスはそこで口を閉ざした。がんばれ、リーマス。
長い沈黙が続いた。リーマスは視線を下げている。3人の表情は分からない。沈黙が長引くごとに、の手にも汗が滲んでくる。
嫌われたらどうしよう。せっかく友達になれると思ったのに。リーマスの気持ちは、手に取るように解った。まだ怖いのだと思う。がリリーに本当のことを告げる時が来ても、ずっと恐怖を抱き続けているだろうから。
やがて、リーマスは目を上げた。強い目をして。
「僕は、狼人間なんだ」
声を上げて言った。離れたところにいるの耳にもしっかりと残るほどに。
再びリーマスは顔を伏せた。3人はどんな反応をしたのだろう。ピーターが肩を上げる様子は見えたけれども、ジェームズとシリウスは何の反応も起こさなかった。
「ごめん……黙ってて……ごめん……隠してて」
「どうして言わなかった?」
ジェームズが口を開く。責め立てるような口調。低い声。初めてだ。ジェームズがこんな声を友人に向けて放つなんて。
「そんなことで、僕らが君を遠ざけるとでも思った?」
「……思った」
「まあ、そうだろうとも」
リーマスはえっ、と顔を上げた。
「僕が君の立場だったら、君と同じように考えたさ。誰でもそうだと思う。でも、よく言ってくれたね。君の言う通り薄々気がついてはいたけど、正直なところ君から告げてくれるとは思わなかった」
「ジェームズ……」
「これで堂々と対策を考えられるね」
「対策?」
「そう。狼人間の症状を治したり、和らげたりする薬とか。あとは、他にもいろいろ」
「で、でも、そんな薬今まで誰も
「僕を誰だと思ってる?100年に1人の天才、ジェームズ・ポッターだよ」
「うわ。自分で言いやがった。寒い」
そうシリウスが言い終わるや否や、ジェームズはシリウスの首に腕を回し、絞めた。いてててと声を張り上げるシリウスに、リーマスも笑う。
「……ありがとう」
「僕らの方こそ。言ってくれて
「ところで、どうしてがここに?」
どこか怪しむような表情のジェームズに、シリウスもピーターも同じような顔をして振り向いた。
ええと、どうしてだっけな。ジェームズの問いの答えが浮かばなかった。むしろ、自分は場違いの存在である気が湧いてきた。わたし、どうしてここにいるんだろう?
「は、監督だよ」
リーマスが言った。ジェームズとシリウスは、顔の半分をリーマスに向けた。ピーターはぽかんとを見つめている。
「僕がへまをしないように、見張ってくれたんだ」
「そんな、大そうな役目してないよ」
は慌てて首を横に振った。
「ただ、昨日ルーピンとマダム・ポンフリーが暴れ柳の方に行くのを見ちゃって……それで、後を尾けてたら見つかって」
「暴れ柳?」
ピーターが小首を傾げる。
「ああ。その根元を通って行くと、ある屋敷に辿り着くんだ。満月の夜は、そこでやり過ごして」
「屋敷ねえ。なるほど」
リーマスの言葉に、ジェームズは腕を組む。まるで、悪戯を考えている時のような表情。目付きは真剣だけれども、口元が笑みを浮かべている。
「ともあれ、がここにいるのは『たまたま』なんだね?特にリーマスと深い関係にあるとかじゃなく」
「そうそう。そんなこと、絶対ないから」
「、そんなに強く否定しなくても」
大きく肩を落としてみせるリーマスに、は「ご、ごめん」とうろたえる。リーマスは笑って「いいよ」と答えた。
「でも、これも何かの縁じゃないかい、との。僕は、ダイアゴン横丁で会った。同じ寮になった。シリウスは家のことで色々。リーマスは今日のことで。ピーターは……まだ何もないけど。なんだか、との因縁を感じるよ」
「おおげさじゃない……?」
の問いとも呟きとも判別がつかない言葉に、ジェームズは立ち上がった。リーマスにもシリウスとピーターにも、にも身体を向けた。
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。でも、この広い世界で僕らがこうして関係を持ったっていうことには、何かしらの意味があるんじゃないかな」
広い世界。広い空、広い大地、太陽の下。
……もし、あの時ジェームズにダイアゴン横丁で会っていなかったら?彼らとこんなに話をすることもなかっただろう。出逢った意味。あるのだろうか。あって欲しいなと願う自分に、は気がついた。
「何だそれ。何かの受け売りか?」
「違うよ!うわー、シリウス、やっぱり君にはロマンがないね」
「ロマンの問題かよ」
「男は常にロマンを追い求めるものさ」
「はいはい」
半ば呆れたような様子のシリウスに、リーマスは笑みを漏らした。
「ロマンは別として、いいと思うよ。生きることとか出逢いとか、そういうことに意味があっても」
「そうだろー?というわけで、まあ、これからもよろしく」
ジェームズは全員に向けてにっこり笑う。
「こちらこそ。……ああ、そうだ。これも何かの『縁』だし、。僕のことは気軽に呼んでよ」
「気軽に?」
「そう。名字じゃ少しよそよそしい感じがするから。秘密の共有者として」
「……リーマス、…」
「あ、それじゃあぼくのことも!名前で呼んでよ」
ピーターが声を弾ませて、を見やった。
「ピーター、だね」
「うん」
なんだろう。……なんだか。なんだか、……
いいな、こういうの。
「それじゃあ、私のことも、気軽に呼んで」
「うん。、よろしく」
リーマスが言い、ピーターもよろしく、と笑った。も、笑みが零れる。
「うん、よろしく」
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これも一から書いたエピソードです。 07/7/21