今までは、ヴォルデモートはダンブルドアの力を恐れ、騎士団には目を向けぬようにしていた。だが、自らの勢力が増大したことで、騎士団の排除に身を乗り出した。そうして、騎士団内でも死者が出ることとなった。
58. The die is CAST
既に、歯車は
「パルランドの遺体を確認した。殺人呪文でやられたようだ」
ムーディが短く告げた。ミス・パルランドは、ノクターン横丁を探るため、ダイアゴン横丁を偵察していた時、殺害されたらしい。深夜、人通りの少ない路地であったそうだ。彼女は、優秀な魔法省の役人でもあった。省内の者が死んだことにより、ますます魔法省の協力は消極的なものとなった。
「これからは、一人で行動することは避けてもらいたい」
ダンブルドアはゆっくりと立ち上がり、声音を低くして続けた。
「ヴォルデモートも本格的に動き出した。我々も、本腰を据えて構えなければならん」
「そこで、わしらから動くことにした。死喰い人が活動の拠点としている場所を突き止めた。罠の可能性もあるが、な」
ムーディの言葉に、ダンブルドアは深く頷く。
「じゃが、奴の暴挙を黙って見ていることはできん。たとえ罠でも、探ってみれば何かしらの情報が得られるかもしれんからの。しかし、危険と思ったらすぐに引き返してもらう」
「この任務には、わしが就く」
ムーディも立ち上がり、言った。
「あと数人、共に行って欲しい
ムーディに呼ばれ、2人は僅かに背筋を伸ばす。
「お前たち、魔法省が募集を停止したんで、さぞや身体が鈍っているだろう」
その言葉に、ジェームズとシリウスは顔を見合わせにやり、と笑った。2人は魔法省に就職を希望していたが、混乱を極めている省は、募集を一時的に停止させたのだった。
「もちろん、行きますよ」
ジェームズの言葉に、シリウスも頷く。リリーとソフィアが表情を曇らせた。
「よし。あとは
言われた3人はこくりと頷く。
「マッド・アイ。私も行きます」
が手を上げると、誰もが眉をひそめた。ジェームズが行くなら、私が行かないわけにはいかない。
「、お前が?」
「足手まといにはならないと思います」
「しかし」
ムーディはダンブルドアに視線を向けた。ダンブルドアは考え込むような表情で、頷くことはなかった。
「マッド・アイ」
私がフィンスターの血を受け継いでいること、ご存知なんでしょう?
ムーディの鋭い目を、は訴えかけるように見つめた。
「
皆が、とりわけジェームズらが顔をしかめたが、その場の空気に流されて、反抗はできなかった。ダンブルドアも、異を唱えることはしなかった。
「気をつけてね」
リリーは、ジェームズとの手を交互に取る。
「大丈夫。ジェームズは私が守るから」
「頼りにしてるわ」
が笑みを浮かべると、リリーも微笑んだ。しかし、心配は拭いきれぬようで、すぐに真顔に戻ってしまう。パルランドが亡くなったことで、『死』が騎士団内でも身近なものとなっていた。いくらダンブルドアがいるとはいえ、身の危険はある。それほどの状勢ということを、誰もが身に染みて感じ始めた。
「ポッター、透明マントを忘れるな」
背後からムーディに呼びかけられ、ジェームズははい、と振り返って答えた。も同じように振り向く。ムーディの背後で、シリウスとソフィアが自分たちと同じようなやり取りをしているのが目に入った。
『気をつけてね』、『大丈夫だよ』……。
恋人たちの、やり取り。
見なかったことにするかのように、はリリーに向き直った。
大丈夫。今私がすべきこと。今私がしたいこと。それは、ジェームズを守ること。今は、それだけを考えよう。無事に帰ってきて、「ほら、大丈夫だったでしょ」、とリリーに笑みを投げかけるのだ。
「さあ、行くぞ。気を抜くなよ」
夜の闇の中、ムーディをはじめとする騎士団のメンバーが出発した。あくまで『探り』を目的としていること、深追いはしないこと。ダンブルドアからの忠告だった。
「」
ムーディが寄って来て、そっと耳打ちした。
「気兼ねはするな。相手は敵だ」
「……どういうことですか?」
「死喰い人相手なら、許されざる呪文を使っても罰せられることはない」
ムーディは辺りを見回しながら、言った。
「厳しいことを言っているのは承知だ。だが、忘れるな」
これは『闘い』だ。命を懸けた、な。
ふう、とダンブルドアは深いため息を吐いた。リリーは彼をちらり、と見やる。ダンブルドアと目が合い、彼はにこりと笑う。しかし、リリーには笑いきれていないように見えた。
「……すまぬことをしたの」
「えっ?」
「新婚の夫婦を引き離すのは、辛いことじゃ」
「いえ、」
確かに、ムーディと共に行ったジェームズたちが心配だった。待つのは、辛い。
「本来なら、わしが行くべきじゃった。しかし、ここを離れるわけにはいかん」
拠点としているホグズミードを襲撃されては、大打撃は必須。
だから今回は自分はここを守り、ムーディに作戦を委ねることにした。
「じゃが
びゅう、と強風の音が聞こえ、リリーは身を竦ませた。
「これが、……戦い。戦争、なんですね」
『死』がより身近なものとなる。不安との戦い。恐怖との戦い。
リリーの呟きに、ダンブルドアは目を細めた。
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07/12/13