春の息吹が聞こえる。
ホグワーツとの
セブルスとの別れが近づくにつれ、私はますます過去の自分のおこないを後悔するようになっていた。
どうしてホグワーツの卒業と同時にセブルスと決別するような真似をしたのか、と。
でも、過去の私にはその道しかなかった。
セブルスが堕ちてゆくさまを見るのが耐えられなかった。
私には彼を引き戻すだけの力がないと諦めるしかなかった。
ジェームズ・ポッターと仲が深まるリリーさんを見て、ぼろぼろに傷つくセブルスを見るのが辛かった。
セブルスは、ジェームズ・ポッターとリリーさんが付き合うようになって、ますます闇の魔術に心酔するようになった。
闇の魔術を使いこなし、強くなれば、リリーさんは自分を見直してくれるのではないかと、そう思っていたのかもしれない。
むしろ逆効果だということに、盲目したセブルスは気づかなかった。
セブルスも深く傷を負っていたのだと思う。
この世で一番嫌いな人と、この世で一番好きな人が一緒にいるのだから。
私は何度かセブルスに闇の魔術から離れたほうがいいのでは、と伝えたことがあったけれど、彼は聞く耳を持たなかった。
むしろ、私も闇の魔術に傾倒するよう勧められた。
闇の魔術があれば。
力があれば。
強くなれば。
どんなことでも成し遂げられると、信じていたのかもしれない。
スリザリンを中心とする生徒は、闇の力に吸い込まれるように盲信していた。
私は怖かった。
セブルスがセブルスでなくなってゆくようで。
セブルスが遠くにいくようで。
いや、もともと手を伸ばしても届かない存在だった。
私では駄目なのだ。
もう限界だ、と思った。
私は、七年の間抱いた想いを諦めることを選んでしまった。
一生届かない気持ちを抱えたまま生きる強さを、私は失ってしまった。
だから私は、日本に帰ることにした。
親から帰って来いと言われていたのを理由につけて。
両親は魔法使いなどではなかったけれど、どこからかイギリスの情勢が良くないことを察していたらしい。
闇の帝王のことを両親が知っていたのかはわからないけれど、何となく悪い影響が強まっていることは知っていたのだろう。
ホグワーツを卒業したら日本に帰るよう、何度も手紙を寄越してきた。
私はそのことを理由につけて、ホグワーツ卒業と同時にイギリスを去ることに決めた。

ホグワーツの卒業式。
晴れやかな顔をしている同級生の中で、私はいったいどんな表情をしていただろう。
この地と決別することへの迷いが依然としてあった。
でも。
眩しそうな笑顔を浮かべるジェームズ・ポッターとリリーさんが抱き合う姿を見て、セブルスが顔を歪める光景に。
最後まで残っていた私の心の一部が、ほろりと砕けた気がした。
「セブルス」
感情を失ったまま、私は人の輪から外れたところにいるセブルスに呼びかけた。
セブルスは不機嫌そうに「なんだ」と答えた。
「
お別れを言いに来たの」
「は?」
私は口先だけでしゃべった。
「私、日本に帰るから。もうここには戻らないから」
「な……にを」
これまでもセブルスと卒業したらどうするか、という話を何度かしたことがあった。
そのときは、ホグワーツで何か仕事ができたらベストだとか、できなくても魔法界で仕事に就きたいとか、そんなことを話していたと思う。
だから、セブルスに日本に帰ると告げるのは、はじめてだった。
セブルスは驚いたように目を丸くしていた。
もうひんやりと冷え切っていた私の感情は、それでもセブルスを目前にすると熱を持とうとしていたけれど、私は何も考えないようにして、ただひと言、最後に伝えることにした。
「さよなら」
と。
そしてセブルスの返答も待たず、彼に背中を向けた。
「」
セブルスが私の名前を呼んだのが聞こえたけれど、振り返らずに、早足で歩いた。
そのまま荷物を持ってホグワーツ特急に乗った、のだと思うけれど、日本にどうやって帰国したかまるで記憶がない。
久しぶりの我が家で、両親が「おかえり」と心から嬉しそうに出迎えてくれて
そこで私は、何かが事切れたように号泣してしまった。
胸が、苦しい。
どうしてこんなに好きだったのに、私は去ったのだろう。
イギリスも。
魔法界も。
ホグワーツも。
セブルスのことも。
大好きだったのに。
両親は驚いてどうしたのかと訊いてきたが、私は答えずにただ泣きじゃくった。
それから私は
日本で、魔法から離れた仕事に就いた。
けっして充実しているとはいえない日々だった。
私のなかで大事な何かが欠けてしまったようだった。

だから。
いまは、きっとしあわせなのだ。
私は、今度は選択を誤らなかったのだ。
そう、信じたい。
2018.11.9
ヒロイン視点:
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セブルス視点:
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