「さよなら」
そんなふうにあっさりと私の前から去ったを、もう友人だなどとは思うまいと決めたのに。
ホグワーツに戻ってきたは、かつてと同じようにひっそりと、しかし確実に私のなかに入り込んできた。
と過ごす季節の移ろいを、充実しているとさえ感じてしまう自分がいた。
実際に、ホグワーツを卒業して
多くのものを失ったあの日々以来はじめて、私の心は穏やかになっていた。
だが、はまた私の前からいなくなろうとしている。
怒りなのか、裏切られたという感情なのか、どう名づければ良いのかわからない意識が腹のあたりを支配する。
いや、腹立たしさのたぐいではないだろう。
ホグワーツを去ることは、あいつ自身が一番辛いようだった。
が私を出し抜いたり踏みにじったりするために、ここに来てまた去ろうとしているわけではないということは、理解できる。
それならばなぜ、ホグワーツを卒業するときは、色のない目をして、虚ろな顔をして、私の前から消えたのだ。
まるで私を捨て去るように。
『自分は彼女を傷つけていないと思ったら、間違いだぞ』
また、ポッターの言葉が蘇ってくる。
そして。
『私は……セブルスのことが、……』

私は、ホグワーツ卒業が近づくにつれ
闇の魔術に深く入り込んでいった。
闇の魔術を身につければ、ポッターからリリーを取り戻せると信じていた。
リリーの目は間違っているのだと、証明したかった。
なら、私の考えを理解し、支持してくれると思っていた。
しかしは私のおこないを咎めた。
「セブルス……きっと、リリーさんは、いまのセブルスの状況を喜ばないんじゃないかな」
遠慮がちに目を伏せるに、私は頭に血が昇る思いがした。
「なんだって?」
「闇の魔術を使いこなせるようになっても、リリーさんは良い思いをしない……むしろ、ますます離れていってしまうんじゃ」
「黙れ!」
私が声を上げると、はびくりと肩を震わせる。
「私は
間違ってなどいない。間違っているのは、おまえやリリーやポッターだ……」
「セブルス、……」
リリーはポッターにたいして良い感情を抱いていなかったはずなのに、いつの間にかあいつと一緒にいて
私が見たことのない表情をするようになっていた。
理解できなかった。
なぜポッターなどが良いのか。
なぜ、私では彼女の隣にいられないのか。
きっと力だ。
強くなれば。
闇の魔術を使いこなせるようになって、一目置かれるような存在になれば。
リリーは、戻ってくるはずだ。
昔、ふたりで野原を歩き回った、あのころのように。

いま、冷えた頭で考えれば、私が間違っていたのだとわかる。
ただ、当時は闇の道に進むしか、選ぶ道がないと信じていた。
だから、私に苦言を呈してくるの存在を疎ましく思ったことさえあった。
そのせいで
あいつを、傷つけたのかもしれない。
あいつが私の前から去った理由は、それかもしれない。
そして 同級生や、ポッターやブラックも去り。
リリーも、いなくなった。
私は何もかも失った。
そう思っていた。
だが、あいつは戻ってきた。
『私は……セブルスのことが、大好きだから』
そしてまた、私のもとから去ろうとしている。
。
おまえは、どういう意図でここに戻ってきた。
そしてどういう目的があってこの一年、私のそばにいたんだ。
私は。
この胸のしこりを、どうするべきなんだ。
2018.11.9
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