11. Past V




「さよなら」

 そんなふうにあっさりと私の前から去ったを、もう友人だなどとは思うまいと決めたのに。
 ホグワーツに戻ってきたは、かつてと同じようにひっそりと、しかし確実に私のなかに入り込んできた。
 と過ごす季節の移ろいを、充実しているとさえ感じてしまう自分がいた。

 実際に、ホグワーツを卒業して   多くのものを失ったあの日々以来はじめて、私の心は穏やかになっていた。

 だが、はまた私の前からいなくなろうとしている。

 怒りなのか、裏切られたという感情なのか、どう名づければ良いのかわからない意識が腹のあたりを支配する。
    いや、腹立たしさのたぐいではないだろう。
 ホグワーツを去ることは、あいつ自身が一番辛いようだった。
 が私を出し抜いたり踏みにじったりするために、ここに来てまた去ろうとしているわけではないということは、理解できる。

 それならばなぜ、ホグワーツを卒業するときは、色のない目をして、虚ろな顔をして、私の前から消えたのだ。
 まるで私を捨て去るように。

『自分は彼女を傷つけていないと思ったら、間違いだぞ』

 また、ポッターの言葉が蘇ってくる。

 そして。

『私は……セブルスのことが、……』

 私は、ホグワーツ卒業が近づくにつれ   闇の魔術に深く入り込んでいった。
 闇の魔術を身につければ、ポッターからリリーを取り戻せると信じていた。
 リリーの目は間違っているのだと、証明したかった。
 
 なら、私の考えを理解し、支持してくれると思っていた。
 しかしは私のおこないを咎めた。

「セブルス……きっと、リリーさんは、いまのセブルスの状況を喜ばないんじゃないかな」

 遠慮がちに目を伏せるに、私は頭に血が昇る思いがした。

「なんだって?」
「闇の魔術を使いこなせるようになっても、リリーさんは良い思いをしない……むしろ、ますます離れていってしまうんじゃ」
「黙れ!」

 私が声を上げると、はびくりと肩を震わせる。

「私は   間違ってなどいない。間違っているのは、おまえやリリーやポッターだ……」
「セブルス、……」

 リリーはポッターにたいして良い感情を抱いていなかったはずなのに、いつの間にかあいつと一緒にいて   私が見たことのない表情をするようになっていた。
 理解できなかった。
 なぜポッターなどが良いのか。
 なぜ、私では彼女の隣にいられないのか。

 きっと力だ。
 強くなれば。
 闇の魔術を使いこなせるようになって、一目置かれるような存在になれば。
 リリーは、戻ってくるはずだ。

 昔、ふたりで野原を歩き回った、あのころのように。


 いま、冷えた頭で考えれば、私が間違っていたのだとわかる。
 ただ、当時は闇の道に進むしか、選ぶ道がないと信じていた。

 だから、私に苦言を呈してくるの存在を疎ましく思ったことさえあった。

 そのせいで   あいつを、傷つけたのかもしれない。

 あいつが私の前から去った理由は、それかもしれない。

 そして 同級生や、ポッターやブラックも去り。

 リリーも、いなくなった。

 私は何もかも失った。
 そう思っていた。

 だが、あいつは戻ってきた。


『私は……セブルスのことが、大好きだから』


 そしてまた、私のもとから去ろうとしている。

 
 
 おまえは、どういう意図でここに戻ってきた。
 そしてどういう目的があってこの一年、私のそばにいたんだ。


 私は。


 この胸のしこりを、どうするべきなんだ。

 

2018.11.9
ヒロイン視点: 10 --- 11 --- 12
セブルス視点: 10 --- 11 --- 12

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